初心者に知ってほしいこと
仏像彫刻を始めようとしている方々に対する初歩的なアドバイスをさせてもらうページです。
質問等ありましたら、メールにてお知らせ下さい。
仏像彫刻を始めるに当たっての
全く経験が無くてもいいの?
女性や、年輩者でも出来るの?
仏像を彫るには、体力が必要なの?
絵心が全くないのだけれど大丈夫?
どの位で一体彫れるようになるの?
長続きしない人って、どんな人?
彫刻刀や材料等は斡旋してもらえるの?
用具を1セット揃える経費はどれ位?
彫刻刀は自分で研げるようになるの?
完成した仏像は入魂すべきでしょうか?   追加 しました









初心者に知ってほしいこと(仏像基礎知識)  
仏の分類
長さの単位と仏像の測り方・大きさ
仏像の姿と光背・台座・印相
一木造りと、寄木造り
仏像の仕上げ方
仏像制作時の諸注意
山崎流 上達のコツ・ポイントは? 
それでもなかなか上達しない人に 
木彫仏の用材

 


   
超初心者の為のテキスト
「だれでもできる ほのぼの仏像彫刻」

山崎祥琳著
詳しくはこちら
道具について
彫刻刀やのみの名称と用途
右用小刀 左用小刀 丸刀 平刀
三角刀 切り出し 小道具 平のみ
丸のみ 三角のみ 箱のみ
砥石と電動研磨機
砥石 電動研磨機
電動工具
電動彫刻機 電動糸鋸 帯鋸
チェーンソー
その他必需品
カンナ のこぎり 曲金
トースカン Gクランプ Lクランプ けひき
ドリル 木工ボンド 彩色用具
その他
彫刻刀の仕組み
彫刻刀の使い方



 
仏像彫刻を始めるに当たっての

 
全く経験が無くてもいいの?
これからこつこつと技術を身につけていってもらいますから、むしろ全く初心者の方が私は教えやすいです。
 
女性や、年輩者でも出来るの?
十分出来ます。私の教室も三分の二がお年寄りです。女性もプロと見間違うほど立派な作品を沢山作っておられます。問題はむしろ女性の場合は定期的に彫刻を習いにゆく時間が確保出来るかどうか、家を空けられるどうか、家族の協力が得られるかどうか。また、お年寄りの場合は健康管理などが大切だと言えます。
 
仏像を彫るには、体力が必要なの?
多少腕力を必要としますが、時間をたっぷり掛けながら少しずつ彫り進めますので、普通の体力があれば大丈夫です。電動工具なども場合によっては用い、彫刻の助けと致しますので心配ありません。
 
絵心が全くないのだけれど大丈夫?
最も多くある質問の一つです。絵心は無いよりはある方がもちろん良いのですが、最初はあまり個性・芸術性を出さずにむしろ機械的に練習します。寸法等を正確に写し取ったり、間違いのない手順で作業することの方がうんと大切です。
先生の作られた見本をじっくり観察しイメージを頭に定着させます。そのうちに彫刻に必要な「デッサン力」も身に付きます。
 
どの位で一体を彫れるようになるの?
本格的に取り組む場合、どの位彫刻に時間を割くか、器用かどうか、など、いろいろな面でかなりの個人差があります。彫刻刀の使い方などの基本から始め、一応の最終目標である観音様が彫れるようになるまでには普通は4〜5年は掛かるようです。しかしもっと速く彫れるようになる感の良い方もあります。
また、一体の仏像の制作に要する期間は、私の教えてさし上げている教室の会員さんの場合、上達するほどにじっくり構えて彫られるようになり、一年に1体〜2体位のゆったりした制作スピードで立派な作品を造っておられます。しかし簡単で小さく可愛らしい仏様なら、一週間〜半月もあれば仕上げられます。
 
長続きしない人って、どんな人? 
折角彫刻を始めたのに、彫刻刀やテキストを揃えたのに、残念ながら挫折する方があります。勿体ないです!どんな方が挫折しやすいか、永年の教室運営の経験からお話ししましょう。
1. 腕に覚えのある人
大工さん、仏壇屋さん等木工関係の方はほとんど長続きしませんでした。木工関係のことなら十分心得があると思っている方はその過信があだとなります。木工関係の知識は無いよりはあった方がよいですが、仏像彫刻については全く別の分野です。ゼロからスタートする心構えがほしいです。
2. 自己主張の過ぎる人
仏像彫刻は一千年の伝統を持つ深遠で高度な技術です。軽い思いつきや安易なオリジナリティーでは、奥深い仏教の精神を形にすることは出来ません。仏教や伝統工芸に真摯に学ぶ姿勢がなければ仏像彫刻は出来ません。仏教に裏打ちされていなければ「仏像」とはいえません。自分のオリジナリティーの枯渇する時が、終焉の時です。
3. 師匠を信頼できない人
技術的面はもとより、人格的にも師匠を信頼できなければ続きません。それはお互いに不幸なこと。教える側からしても早く辞めて欲しいものです。
4. 先を急ぎすぎる人
技術が身に付かないうちに前を急ぐ人がいます。そそくさとこなせるほど、仏像彫刻は根が浅くはありません。本人は「急いでいない」と思っていても、師匠から見れば、あわてていることがよくわかるものです。
5. 浮気性の人
じっくりと取り組まず、師匠から「合格」の印可のないうちに、心がはやり、別の作品に移行する人。
6. 損得を考えすぎる人
何でもお金にしようと思う人。彫刻教室は師匠が深く考えながら、経営をしています。師匠の気持ちを考えず、自分の損得だけで行動されると、教室が成り立たなくなります。当然、破門されます。
 
彫刻刀や材料等は斡旋してもらえるの?
ご希望があれば斡旋致します。基本的にはどんな彫刻刀やのみを使って頂いても良いわけですが、やはりその場面場面において、彫刻刀を正確に使い分けたほうが完成度の高いものが出来上がります。ですから、ある程度の種類はきちんと揃えて頂く必要があります。
 
用具を1セット揃える経費はどれ位?
最低限、彫刻刀は10本ほど(28000円位)、テキスト代金4000円程を含み、その他必要な用具を揃えると合計40000円程度になると思われます。その他に最近はほとんどの人が刃物を電動研磨機(30000円程、各種)で研いでおりますので、そのうち必要になると思われます。あとは、材料費が適宜必要になります。
 
彫刻刀は自分で研げるようになるの?
基本的に彫刻刀は自分で研げるようになってもらいます。 砥石の使い方をマスターするのはなかなか大変です。しかし、電動研磨機はあっという間にその使い方をマスターできるので大変便利です。どちらを使用してもかまいませんが、私を始め、会員のほとんどは専ら手軽な研磨機を使って研いでいます。電動研磨機はいろいろな種類が販売されていますが、価格の高い大型のものはそれなりに安定している反面、移動には不便です。
   
完成した仏像は入魂すべきでしょうか? UP
 

この手の質問が意外に多いので驚きました。深遠なる仏道に対しての畏敬・畏怖の念があるのでしょうか?宗派によっても考え方が異なると思いますが、信仰の拠り所とされる(仏壇などに安置される)仏像の場合は、菩提寺(手次寺)の住職と相談されるのが宜しいかと思います。そのことを御縁に、お寺様と親しくお話しをされ、仏道を学ぶ第一歩になるならばすばらしいと思います。

「参考までに、私の場合」
依頼されて私が制作した仏像  依頼主にとって信仰の対象である場合、お寺様にお願いして宗派の教義に従って入魂(法要)をされるのであろうと思います。
自分用に制作した仏像  1・自分のお寺の本堂や信仰の対象として制作した像は(真宗大谷派では「入魂」という考え方そのものがありません)尊崇の気持ちで法要をします。 2・それ以外に個人的に造ってみたいと思った仏像は、一体ごとに法要などはせず、床の間やそれなりの場所に展示して、多くの方々に鑑賞してもらうことを喜びにします。




 
初心者に知ってほしいこと  (仏像基礎知識)

 
仏の分類
御仏には多くの種類があり、分類の仕方も様々ですが、一般的には次の5つに当てはまります。
如来の部
悟りの境地に達した仏様達、釈迦如来・阿弥陀如来・大日如来など
菩薩の部
衆生の救いと、自ら未来に悟りを開くべく、修行に専念している菩薩達。観音菩薩・普賢菩薩、弥勒菩薩など
明王の部
如来の命を受け人々の前に恐ろしい異形で現れ、威嚇し屈服させ済度する不動明王・愛染明王など
天部
仏道にいそしむ人々を守護する、インドや中国などの神々、仁王・帝釈天・毘沙門天など
祖師の部
仏弟子や各宗派の祖師。また、仏道に身を投じた僧侶など

当サイトの、「み仏紹介の部屋」、「仏像彫刻」、ひろし様のサイト「仏像世界」を参照下さい。
 
長さの単位と仏像の測り方大きさ
単位 名称 長さ1 長さ2  像の大きさの基本
1丈 じょう 10尺 約3.03m  1丈6尺仏  (仏の身長)
1尺 しゃく 10寸 約30.3cm  8尺仏    (2分の1)
1寸 すん 10分 約3.03cm  4尺仏    (4分の1)
1分 10厘 約3.03mm  1尺6寸仏  (10分の1)
●仏像彫刻には尺単位の物差しを用います。経典には仏身は1丈6尺仏と説かれ、その何分の一かの大きさで作られることが多かったのですが、現在では安置する場所に合わせて、大小様々な大きさで作られています。

●立像の場合、足の裏から額の髪の毛の生え際までを10とし、それを10等分したものを1ツという単位で表す方法が多く用いられています。髪の毛の生え際から唇の下までが1ッとなります。
例えば、1尺仏=足の裏から髪の毛の生え際までが約30センチの仏様となり、1ツは1寸。2尺仏は約60センチ強の大きさの仏様で、1ツは2寸になります。そこに髪の毛などの寸法を加えたものが、御仏の「身の丈」(身高)となります。そして台座や光背など全て総合した高さを「総高」と言います。
●座像の場合は、尻の底面から髪の毛の生え際までは5ッ。立像の半分の数値になります。つまり、立像1尺仏=座像5寸仏の大きさとなります。

【右の図】身高が同じ寸法というだけでは、立像の阿弥陀如来と座像の大日如来ではかなりの大小の差が出ることになります。
○み仏の大きさ
 立像=足の裏から髪生え際までを測る  
 座像=尻の下から髪生え際までを測る
み仏の大きさ
    立像              座像
 
仏像の姿と光背・台座・印相
姿
    工事中    次回 更新致します。申し訳ありません。
印相
手の組み方(印相)で、御仏の種類や御仏の働き、また御仏の内面的意志などが判るとされています。 (「みほとけ紹介」のページを参照) 
印相には多くの種類や、いろいろな見解がありますが、ここでは一般的に知られている印相を紹介しています。指の形だけで御仏の種類が変化しますから、正確に表現してください。

       定印
 
一木造りと、寄木造り
木造仏の構造は一木造りと、寄木造りの2つに大別できます。
しかし、いずれかに分類できにくい微妙なものもたくさんあります。
一木造り
仏像本体の主要な部分を一木で造ってあるもの。概して小像や単純な形の像に適していますが、等身大のような大きな像を一木で彫りだしている例もあります。
寄木造り
仏像本体の主要な部分を2つ以上の材料を接ぎ合わせて造ってあるもの。概して大きな像や複雑な形の像に適しており、複数の人数で分業制作することも出来るので、非常に合理的な制作方法ですが、本格的な造像技術を持っていないと取り組めません。
一般的に一木から全てを彫りだしてあるもの方に、高度な技術が必要だと思われがちですが、必ずしもそうではありません。一木であろうが寄木であろうが、仏像としての完成度の高いもの、造形的に優れたものが名作です。とりあえず入門者の場合は取り組みやすい小さな一木造りからスタートをするのがよいでしょう。
 
仏像の仕上げ方
仏像の仕上げ方には主に下のような4種類の仕上げ方があります。
白木仕上げ
顔の一部(眉や目)以外には彩色をほとんどせず、白木のままに仕上げた像。清楚な表現の中にも仏師の彫刻刀さばき、腕のさえがはっきり現れるので、ごまかしの利かない確実な表現方法です。
彩色仕上げ
水干絵の具、岩絵の具等を用いて仏像の体や衣に美しい彩色を施します。木肌の美しさ、彫りの味わいを大切にした、淡彩色仕上げと、しっかりとした下地塗りから始め重厚な彩色を施した、極彩色仕上げの2種類があります。現代ではあっさりとした淡彩色が好まれる傾向にあります。また、新素材による彩色方法も次々と研究されています。
漆箔仕上げ
白木仕上げを施した像に漆を幾重にも塗ってから、金箔を施します。彫り師と塗師と金箔師の三者の技術が一体となった時に初めて像は光を放ちます。
截金仕上げ
(きりかね)
金箔を四枚焼き合わせて厚くし、竹刀で細くひも状に切ったものを布海苔で像に貼っていく、非常に繊細で豪華な技法。白木の上に施したり、彩色や漆箔したものの上にも施したりします。
最初は白木仕上げから始め、お顔の描き方をしっかりマスターしましょう。彩色仕上げはともすると下品な感じになりがちですから、配色などに十分注意が必要です。また、漆箔仕上げは、余程腕の良い専門家に依頼しないと彫りが台無しになりますからこれも要注意です。
 
仏像制作時の諸注意
仏像を制作するに当たって以下のことに気をつけましょう。
1. 寸法を正確に
寸法を正確に、何度も確認しましょう。寸法取りが間違うと致命的な失敗となってしまいます。一度測っただけでは安心できません。上から測ったり下から測ったりしてください。また、不思議なほど彫っている内に、寸法がずれたり基点が移動してしまうものです。
2. 手を洗おう
「手に汗を握る」という言葉があるように、真剣に取り組むほど手の油が作品に汚れとなって付いてしまします。仕上げの段階では手袋をつけるか、何度も石けんで手を洗いながら手あかで汚れないように彫り進めましょう。せっかく仕上がっても手あかで汚れているようでは仏様に失礼です。
3. 乱造はダメ
安易な乱造やオリジナルは決して上達にはつながりません。間違った作り方で100個作っても、ダメはダメです。一体を正確に仕上げる努力が大切です。
4. 鏡を使おう
仏像は左右対称が基本です。とりわけお顔については左右のバランスが崩れていると非常に見苦しいものになってしまいます。造っている時にはほとんど気づかずとも鏡に映してみると、狂いがはっきりと判ります。どうしても右利き左利きなど、個人の彫り癖があって歪んでしまうものです。私は粗彫りの段階から仕上げ彫りまで何十回となく鏡に写して狂いを修正しています。
5. 夜の照明
夜に彫刻をする時の照明の当て方は非常に大切です。照明が当たっている部分は大きく見え、陰の部分は縮んで見えます。また、斜め方向から照明が当たっていると、作品が歪んで見えることもあります。私は部屋全体を蛍光灯で照らし、もう一灯白熱球を真正面に据えて陰が左右対称になるようにして彫ります。
6. 太陽は敵?
太陽の下で彫刻をすると非常に快適です。しかし、太陽光線には強烈な紫外線が含まれており、冬の北側のガラス越しで窓際に作品を置いただけでも、知らぬ間にしっかりと日焼けしてしまい、色のむらになってしまいます。彫刻作業が終わったら布等でカバーをして、太陽光線を当てないように注意しましょう。
7. けがに注意
言うまでもなく、鋭利な彫刻刀は大変危険です。しかしけがは切れなくなった彫刻刀を無理に使っている時によく起きます。また、「彫刻をしている時にけがをせず、削り屑の中に紛れていた刃物でけがをした」等ということもよく耳にします。細心の注意が必要です。
8. 辛辣な
  アドバイサー
家族の方を良きアドバイサーに。あばたもえくぼで、自分の作品のゆがみや欠点にはなかなか気がつかないものです。鏡に映して客観的に見ても、いつしかそのことにさえも慣れてしまい、感覚が麻痺します。ですから、他人の目による強烈なアドバイスや指摘がどうしても必要です。仏像は多くの人から拝んでもらうものですから、欠点を削除するという方向で造っていくとまろやかな作品に仕上がります。そのためにも「他人の目」を持つ良きアドバイサーが必要になるわけです。欠点を指摘されたら反論せず感謝の気持ちで素直に対応しましょう。
 
山崎流 独断的上達のコツ・ポイントは?   

1. 善き師との
出会い
素敵な師匠と出会うこと。これにつきます。  (自戒を込めて)
善き師とは @技量が格段に優れていること。A教え方も卓越していること。B師匠自身もいつも向上心を持って、お弟子さんに学ぶ謙虚さを持っていること。
良き師と出会うことにより、師匠の目線で作品が見れるようになります。
2. 技術を言葉で
セオリー化する
技術を言葉に置き換えることが出来なければ、向上はありません。人間は言葉で考え、理解しますから、理論的に教え、理論的に習うことにより飛躍的に技術が向上します。感動の押し売りや安売りだけでは作れるようにはなりません。作家に取っての感動とは、自分の作品に確実に反映出来るようになること、を言います。
言葉で納得することが出来たときに、初めて自分の作品に応用出来ます。セオリー化出来ない技術などありえません。但し、オープンにするかどうかは別の次元です。

頑張ってね
3. 遠くから見る
近視眼的に作品を作ると、大きな失敗をします。燃え上がるような情熱も時には必要ですが、冷静な判断力や鑑賞眼のほうが大切です。遠くから見ると、不思議と欠点が見つかるものです。遠くから見るのも仕事のうちです。欠点が見えなくなったときが、作品が完成するときです。しかしそれは進歩の止まったときでもあります。
4. 限りない美の追求
数や形が出来ればそれで良し、と思わずに、あらゆる角度から観察して、もっとも美しい、み仏としてふさわしい形や線を追求します。簡単な作品はむしろ難しいものです。
5. お金に換える?
信じられないかもしれませんが、作品を販売することで、急速に伸びる人と、急に技術的堕落をする人があります。どちらになるかは、本人次第です。
6. 材料の吟味
拾ってきた材料や只の材料を使わない。どうせ失敗しても只の材料だからいい、という気分で作れば、心が入りらず、粗略になります。よい材料を手にしたときに技術もうんと向上することが多いのです。


 
それでもなかなか上達しない人に 一言 苦言           
いろいろ注意しながら励んでいるつもりなのに、いっこうに上達しないと悩んでいるあなたに、アドバイス。 
1. 技巧に走りすぎ?
上手に見せようとしすぎて、あるいは頑張ろうとしすぎていませんか?
簡単なことをきっちり仕上げてこそ上手というもの。うるさい作品にならぬように。
2. 彫刻刀が研げない
意外にカスをしっかり除去出来ない人が多いのです。刀の切っ先が良く研げていないと、薬研彫りさえ出来ません。建物が立派でも掃除をせねば台無しです。
3. いきなり開眼
彫りにたっぷり時間をかけ、最新の注意を払いながら、仕上げの段階、つまり開眼の作業をどういう訳か、そそくさとこなしている人が案外多いのです。
ノウハウをしっかり教えてもらい、練習・リハーサルをすること。ぶっつけ本番で、デリケートな開眼がうまくゆくはずはありません。
4. 先生に頼りすぎ
信頼できる先生にすべて頼りすぎて、「お願いしまぁす・・・」といっていつも手助けしてもらってばかりではだめ。そのくせ次々と高度な段階に進みたくなりますが、実は全く実力が付かない人。気の弱い先生は断るに断れず必死です(笑)。
5. 先生の言うことを聞かない。
先生は作品の欠点とその解決策を教授されます。しかし不思議なことにいつまでも前者を主張し続ける人、つまり、なぜ失敗したかを言い続けるのです。それより、後者の「具体的な解決策」をしっかり先生から聞き取る努力をしましょう。
6. 上手になろうとしない?
上手になろうとしない人がいます。「ボケ防止のため」とか「暇つぶし」とか言いながら彫っている人がおられます。マイナス的自己暗示が全面に出てはいけませんし、先生も張り合いがありません。
7. 細部にこだわりすぎる
粗彫り・中仕上・仕上げの段階を追って造ること。途中の段階なのに仕上がりの微細な部分に強くこだわり、全体を見ない人。このタイプの方も非常に多いです。いつも仏像の全体の大まかなバランスを確認してから徐々に細部へと進めましょう。


  
何でも忘れる?
 何度教えてもその場限りで、次作に応用できない人。例えば、地蔵仏頭で会得したことを釈迦仏頭や観音仏頭でもその都度、1〜10まで同じことを繰り返し聞く人。これでは教える側も新しいことが教えられず、厭になってしまいます。しっかりメモを取り忘れぬように努力してください。
   
木彫仏の用材
彫りやすい木材であれば基本的には何でも結構です。しかし一般的には、桧・楠・松・桂・白檀等が使いやすいのでよく用いらています。

ひのき
美しい木肌、高級な香り、彫りやすさ等、全ての面にわたって超一級品です。高価なのが欠点です。白木造りから、漆箔仕上げまで、全ての高級な仕上げに対応します。

くすのき
(くすのき)とも書き、樟脳の原料にもなる木です。力強い表現の仏像彫刻や、大きな像を造る時によく用いられます。香りもよく彫りやすい材料です。
非常に彫りやすい材料です。但し、ヤニ気があるために日焼けをしやすいのが欠点です。漆箔仕上げや彩色をする場合に多用されます。練習用には最適です。
白檀
びゃくだん
非常に香りのよい香木です。堅いために彫りにくいと思われがちですが、細かな表現が楽に出来て、むしろ彫りやすい素材と言えます。しかし現在インドは輸出の禁止をしているため、入手が困難になりました。誰もが一度はこの白檀で仏像を彫ってみたいと思う憧れの素材です。
初心者はとりあえず彫りやすく安価な松材で練習をして、仏像のバランス感覚を掴んでから、 
高級な桧などに挑戦するとよいでしょう。



 
道具について        道様のサイト「道刃物工業株式会社」を参照下さい。

 
彫刻刀やのみの名称と用途
仏像彫刻に大切な彫刻刀や工具について1つずつ簡単に説明をしていきます。刃物類は品質により、価格差がありますが、参考価格も書いておきました。
 
-右用小刀-
右用小刀
彫刻刀には多種多様な形がありますが、小刀(こがたな)は最も基本的で多用される刃物。粗彫りから繊細な仕上げ彫りまで、大活躍です(→彫刻刀の使い方)。出来たら幅の広いもの、中程度のもの、細いものなど数本を揃えたいものです。中程度の4分の小刀で1000円〜2500円程度(刃物の品質による違いあり)。太いものはもっと高価。
 
-左用小刀-
左用小刀
右利き用、左利き専用という事ではなく、刃先の傾きが異なる小刀という事で、どちらかと言えば右利きの人は右用小刀を多様し、左利きの人はその逆です。しかし、木目の方向などにより、一方だけでは使いにくい時がよくありますから、左右の両方を揃えたいものです。右用小刀と同価格。
 
-丸刀-
丸刀
粗彫り・小作りの場合に大掴みに削り取ったり、刃の丸いカーブを利用して、美しいU字形の溝彫りをする時に用います。最も種類を多く揃えたい彫刻刀です。刃先の幅の大小、浅丸・内丸・深丸など、刃のカーブも多種あります。丸刀の研ぎは非常の難しいのですが、研磨機を使うと簡単に研ぐことが出来ます(→彫刻刀の研ぎ方 工事中!)。小刀と同寺程度の価格ですが、5厘などの細いものは意外に高価です。
 
-平刀-
平刀
小刀と違い右用左用がありません。平らな部分を削る時に押しながら使います。小刀と同価格。
 
-三角刀-
三角刀
押しながらV字形の溝彫りに使います。非常に便利な彫刻刀ですが、反面、研ぎが難しく技術が必要です(→彫刻刀の研ぎ方 工事中!)。作り方が難しいため、価格は小刀の1.5倍位の価格です。
 
-切り出し-
切り出し
小刀の刃先が細く尖った彫刻刀で、狭いところや深い部分の細かな彫りに適します。小刀よりやや高価です。
 
-小道具-
小道具:丸刀小道具:平刀小道具:三角刀
彫刻刀の変形刃物。柄に差し込まれている刃物の首の所が細くなっているために、狭い部分の彫りに適します。また、柄が刃に比べて細く仕上がっているために、握りやすく、使いやすい刃物です。種類は彫刻刀と同じものがあり、価格も同様です。ある程度彫刻刀が揃ったら、小道具も少しずつ揃えたいものです。
 
-平のみ-
平のみ
のみは彫刻刀や小道具とは異なり、全体が丈夫に出来ており、金槌や小槌で叩いてパワフルな彫刻の粗彫りや、堅い材料の彫りなどに用います。また、大作造りには欠かせません。しかし、大工さんが使う建築用ののみとは異なり。彫刻用ののみは若干スリムに出来ています。大作に挑むようになったら少しずつ種類を揃えたいものです。研ぎ方は彫刻刀とほぼ同じです。価格は彫刻刀の1.5倍位ですが、彫刻刀と同じく、品質により価格に大きな差があります。
 
-丸のみ-
丸のみ
彫刻刀の丸刀と同じ使用目的で使います。価格は彫刻刀の1.5倍位です。
 
-三角のみ-
三角のみ
彫刻刀の三角等と同じ使用目的で使います。価格は丸のみよりやや高価です。
 
-箱のみ-
箱のみ
刃先がコの字形になっていて、粗彫りをする時に非常に便利です。制作方法が難しいため、かなり高額です。
 
砥石と電動研磨機
彫刻刀の研ぎは非常に大切です。昔は専ら砥石だけを用いて研いでいたため、「研ぎ十年」等とも言われ、多くの人がここで挫折する関門でした。しかし各種電動研磨機の出現により誰でもが簡単に研げるようになり、仏像彫刻がうんと身近なものになりました。
 
-砥石-
砥石
粗砥・中砥・仕上砥を順番に用い、丁寧に彫刻刀を研ぎ上げます。しかし、丸刀などはなかなか研ぎに技術を必要とします。水砥石・油砥石、最近ではダイアモンド砥石等があります。人工砥石は安価。天然砥石は高価です。
 
-電動研磨機-
電動研磨機モーターに砥石・布バフ・皮・鉄板などを取り付け回転させて彫刻刀を研ぎます。なお布バフ・皮・鉄板には、砥材として青棒・赤棒などを付着させて使います。短時間で簡単に彫刻刀が研げるので非常に便利です。とりわけ普通の砥石では研ぎにくい丸刀の研ぎには驚異的なパワーを発揮しますので、ほとんどの彫刻家が使用しているようです(→彫刻刀の研ぎ方 工事中!)。
〜8万の大型研磨機から万円程の小型研磨機まで各種あり。回転方法も水平に回るものと、縦に回るものの2種類があります。
設置場所の移動を考えなければ、なるべく大きな研磨機を購入された方が、回転も能力的にも安定していますし丈夫です。部屋から部屋へと持ち運び移動して使いたいのであれば、3万程度の小型がおすすめです。
安く上げたいのであれば、1万円弱程度の市販の両頭グラインダーを改良して、バフを取り付けて作ったりすればある程度のものが2万円以内で出来ます。現在私は場所と目的に応じて4種類の研磨機を使い分けています。
円形の砥石をモーターで回転させて水をかけ流しながら研ぐ形式の研磨機もあります。
これも2万から5万円程度のものが市販されていますが、刃物の焼きが戻らないので、安心して使えます。
私も時々目的に応じて使います。水の設備や、丸刀の研ぎが弱点となります。
 
電動工具
全て手造りの仏像彫刻と思われがちですが、非常に有効な電動工具を幾つか紹介します。文明の利器は大いに用い、時間短縮と正確な作品造りに役立てましょう。
 
-電動彫刻機-
安全性が高く、初心者でも簡単に使えます。モーター部と刃の部分がフレキシブルシャフトで結ばれている分離型と、モーターと一体型のものがあるが、後者が遣いやすい。削り痕は非常に滑らかで、綺麗。特に欅や白檀などの堅木には威力を発揮。さくさくと楽しく削れるので彫り過ぎに注意しなければならない程。
欠点は使いやすい機械の割には、音が少々うるさいこと。一体型はモーターの回転音は比較的静かだが、削る時の打撃音は一体型でも分離型でも少し気になるので、深夜は使いにくい。価格は20000円〜50000円程度。
 
-電動糸鋸-
安全で誰でもすぐに使いこなせる工具。替え刃の取り付けがワンタッチのもなど最近は使いやすくなっている。刃の種類もいろいろあり、目的によって使い分けるとよい。順目と逆目では切断面の美しさにに差が出るので、切り込みの方向に工夫したい。しかし、最後には彫刻刀で仕上げたいところ。あまり厚いものの切断は出来ない。せいぜい5cmくらいまでか。
 
-帯鋸-
丸い襷(たすき)のような、構造の帯状の刃が回転する。刃には幅の広いものから5mm程度のごく細いものまであり、使い分けることで、パワフルに直線も曲線も自在に切断出来る。私の持っているものは、一般の木工用としては一番小さなタイプで、6寸厚まで挽けるものだが、実際には5寸ちょっとくらいまでの切断が可能。価格は200000円〜。工夫して回し挽(曲線を挽くこと)をすれば、大いに彫刻の時間節約になる。工芸用の超小型の帯鋸もあります。
 
-チェーンソー-
大きな材料を切り込んでゆくときには非常に便利。練習すれば割合簡単に使えます。
電動とエンジン式がありますが、前者で十分。価格は10000円〜20000円程度。
 
その他、必需品 
その他、彫刻をするに当たっての必需品をいくつか紹介します。また、ここに紹介したもの以外にも、様々な工具がありますので、工夫して積極的に使ってみましょう。夢が広がります。
 
-槌-
金槌ゴム槌木槌
槌は叩きのみを用いる時に使います。金槌、木槌、ゴム槌、プラスチック槌等の槌があります。金槌は打撃の力を効率よくのみに伝えますが、打撃音が大きいため、夜は使えません。反面ゴム槌は打撃力は若干金槌に比べ劣りますが音がほとんどしないため夜等に用いても近所迷惑にならず、便利です。価格は1000円〜2000円程度。
 
-カンナ-
カンナ
四角い材料の表面を削ったり、足の裏の底面を仕上げたりする時に用います。また、高度な寄せ木造りにおいては必需品です。価格は2000円〜10000円程度、各種あり。
 
-のこぎり-
のこぎり
縦引き・横引きのこぎりと、回し引きのこぎり、糸のこぎりなどが必要です。尚、電動糸のこぎり(ミシン)は、光背などの込み入った型抜きには必需品です。電動糸のこぎりの価格は30000円〜50000円程度で小型のものが買えます。
 
-曲金-
曲金
仏像彫刻は各部分の寸法・比率配分を非常に大切に致します。この曲金がないと、仏像は造れません。尚、単位は尺目盛りを使用します(→長さの単位と仏像の測り方 工事中!)。価格は1500円程度。
 
-トースカン-
トースカン
仏像の各部分の高さを測ったり均等な高さのラインを引く時に非常に便利です。市販もされていますが手作りのオリジナルトースカン造りも楽しいものです。鉛筆やボールペンなどを取り付けて使います。
 
-Gクランプ-
Gクランプ
材料と材料の圧着には絶対に必要です。複数個をセットで用います。価格は大きさによりまちまちですが、500円〜2,3000円程度。他にも「万力」や「ハタ金」等、いろいろのタイプがあります。用途に合わせて適宜用います。
 
-Lクランプ-
Lクランプ
Gクランプと同様の使用方法で、大きなものになるとGクランプよりも、もう少し幅の広いものの圧着にも
使えます。価格は1000円〜4000円程度。
 
-けひき-
けひき
仏像彫刻と言うよりは大工道具の必需品で、細い筋を引いたり、礼盤(聖徳太子などの台座に用いる)などを造る時には便利です。価格は1000円〜2000円程度。
 
-ドリル-
ドリル
仏像彫刻には電動工具を用いると便利です。特にドリルは必需品。錫杖や蓮華を持つ握り手に穴を開けたり、額の白毫をはめ込む穴を開けたり、光背造り等に使います。回転数を変えられるちょっと高級品を揃えましょう。価格は5000円〜20000円程度。
 
-木工ボンド-
木工ボンド
木工用のボンドは非常に強い接着力を持ち仏像彫刻には不可欠です。最近では30分程度で乾く速乾タイプもあります。水性で使いやすく、乾いたら透明になり、刃物で削ることも可能です。油性のボンドは絶対に使用しないでください。価格は100円〜1000円程度、量によって異なります。
 
-彩色用具-
絵の具絵の具 目鼻を描いたり頭髪や天衣(てんね)などに着色をする時に用います。絵の具には各種ありますが最初は練習用も兼ね、日本画用の水彩絵の具を使ってみるとよいでしょう。慣れたら、若干使いにくいけれど、変色しにくい水干絵の具や岩絵の具、また、新素材にも挑戦してみましょう。水彩絵の具の価格は一本100円程度。
ドーサドーサ 木材には小さな穴が開いているために不注意に絵の具を塗ると、にじんでしまいます。そのにじめ止めとして半透明のドーサ液を塗って、乾いたらその上に絵の具で彩色をします。ドーサ液はミョウバンと膠(にかわ)液で作りますが、既に完成したものも一本1000円程度で、画材店には市販されています。
彩色筆
彩色筆
広い面積を塗る時に使います。大中小等、様々な太さがあり、価格は500円〜1000円程度。画材店にあります。
面相筆
面相筆
名前の通り、仏の眉や目を精密に描く時に使います。太さと品質によって値段も違いますが、なるべく高級品を揃えたいものです。価格は1500円程度。画材店にあります。
 
-鏡-

仏像彫刻には欠くことの出来ない道具です。30cm程度の大きさがあれば十分ですが、立像を映す時には縦長のものの方が便利です。価格は500円程度。



 
その他

   
彫刻刀の仕組み
彫刻刀はから出来ています。刃は柄の内部までしっかりと埋め込まれて固定されていますが、高級品には柄から刃が抜き出せるような仕組みになっているものもあります。また刃だけ(黒刃)を購入して、柄は自作している人も沢山おられます。

は、鋼に軟鉄を焼き併せてあり、研ぎやすく切れやすい構造になっています。鋼の材質の種類によって、切れ味や刃の持ち(長切れするかどうかということ)が微妙に異なりますが、信頼できる刃物やさんで購入されれば間違いありません。
 
はほとんどが木製ですが、握りやすい形に加工したり、色を塗ったり工夫するのも楽しいことです。
 
刃の研ぎは切れ味を決定づけます。刃の先端を「刃先」や「切っ先」と言い、非常に大切な部分ですから、ここも入念に研いでください。
どんなに高級な刃物でも研ぎが悪ければ、全く切れません。
 
彫刻刀の使い方   ※ここでは小刀を中心に説明します。
「みなさん、頑張ってマスターしてね!」
1.小刀の役割
小刀は最も代表的な彫刻刀です。この使い方をマスターすることは、あらゆる彫刻刀にも通じることになりますので、教室では握り方から丁寧に教えています。

その役割としては次の2つがあります。
 
@刃先を主に用い微細で優雅な線や目などの細かい表現をする
A刀全体をダイナミックに用い立体的表現荒削り仕上げなどをする
 
この2つの方法を自在に用いて、み仏を表現します。ここではまず、@の刃先の使い方を下ので説明し、次にAの刀全体の使い方を最後ので説明しています。(Aについては後日詳しく説明する予定です。
2.小刀の握り方

鉛筆を削る容量で逆目 ・ 順目を説明してみました。スムーズに削れる方向が順目です。刃物がひっかかる感じがしたら逆目になっている可能性が高いので逆方向から削ってみてください。
鉛筆を削る時のように、利き腕側(右手)に小刀をしっかりと握るのが小刀の握り方の基本です。このとき、指に力を入れ固定しますが、腕全体の力は抜きます。右手の役割は、いわゆる自動車のハンドルに当たり、切り込みの進行方向を決定しますから、作品の出来映えを大きく左右します。
 
左手に材料を持ち、また親指の腹で刀の背を押して削ります。自動車のアクセルに当たるのがこの親指です。親指で5ミリ押せば、小刀は5ミリしか前進しません。だから、小刀が暴走して怪我をすることはあり得ません。

旨く削れない場合は、次の原因が考えられます。@小刀の刃が切れない。A右手でしっかり小刀を固定していないので、切り込みの方向が定まらず、がたついてしまう。B左手の親指で押す力が弱く、材料に負けてしまう。C逆目(さかめ)の方向に削っている。
全くの初心者は、鉛筆を削る容量で練習してください。すぐに慣れます。
3.小刀の使い方(切っ先の練習)
    @押して切り込む           A引いて切り込む        B丸刀・平刀の使い方
@小刀の握り方のセオリー通り、右手でしっかり方向を定め、左手の親指で確実に押し進めます。初めは左手の親指の腹がいたく感じられるかも知れませんが、じきに慣れます。あくまでも右手はハンドルに徹し、切り込もうとして引っ張ったり押したりしないことが大切です。

A小刀の方向を@とは逆に手前に向かって進むように持ち替えます。今度は右手がアクセルとハンドルの二つの役目を果たします。ブレーキ・ストッパーとしての役割は左手の親指が担当します。親指を5ミリ引けば、刀は5ミリ分だけ手前に切り進みますから、この場合でも、刀が暴走して怪我をすることはありません。

B丸刀・平刀は今まで同様に鉛筆の握り方の応用でOKですが、左手の人差し指と中指(親指でも良い)を刃の脇にしっかり添えて刃の暴走を制御します。薬指と小指は材料に固定しながら彫り進めますから、安全です。

刃先の微妙な使い方をしっかりマスターしてください。@Aの場合のポイントは、肩の力を抜き、一気に深く彫り込まないこと、なるべく浅く切り込むことです。その方が美しいラインで切り込めます。浅すぎると思った時はもう一度同じ作業を繰り返せば良いわけです。気張って深くしすぎると、力が入り過ぎ、思うようなラインが彫れないばかりか、彫刻刀が暴走し、思わぬ怪我をする時もあります。
4.粗彫りの時の 丸刀 ・小刀の握り方
丸刀 図のように力一杯刀を握り、手首を固定します。丸刀(左図)の場合は肘を中心にして木目の方向と直角に彫り込みます。勿論左手で材料をしっかり抱えて固定します。右手の斜線部分が彫り込んだときに材料にぶつかり、ブレーキ・ストパーの役割を果たしますから、パワフルで安全な彫りが出来ます。しかし慣れるまでには若干熟練を要します。
 
小刀 やはり手全体でしっかり握り手首を固定し、腕全体を用いて手前方向に削ります。手と腕の斜線部分がカンナの台のような役割を果たしますので、木目に沿って安定した削り込みがパワフルに出来ます。この削り方もかなり練習が必要です。 
5.レの字彫りの練習
                           レの字彫りとは、の字のような断面を持つ溝を彫ることで、下の薬研彫りと共に基本中の基本です。

@小刀直角に立て込みを入れます。
一気に深くしないで、数回同じ所を切り込みながら、深くします。
 
A斜めから切り込みを入れますが奥で交差していないと切り屑が取れません。
 
Cレの字形の断面を持つ溝の完成。

小刀を“こじる”と刃先が刃こぼれします。

下の図は斜めから強く削り、角度の大きいレの字彫りにする容量です。(4)が完成です。
 @立て込み  A※取れない  B※取れる  刃こぼれ
6.薬研(やげん)彫りの練習  ※薬研=昔、医者が薬剤をすりつぶしたり調合するために用いたV字の溝のある器具
薬研彫りとは図の(5)の様にV字形の断面を持つ溝を彫ることを言います。基本的には上記のレの字彫りと同じ考え方で彫ります。

板材に左図の様にいろいろな幅、いろいろな角度でレの字彫りや薬研彫りを練習してみましょう。
きちんと一定の幅で造ると練習になります。
最初は直線で、慣れたら様々な曲線にも挑戦しましょう。また順目と逆目にも注意しましょう。切れの良い方向が順目です。
練習作品として、板仏のページなども参考にしてください。
    上は溝の断面図     下図は練習用に数本削った状態
7.立体を造る 練習作品:宝珠
薬研彫りなど彫刻刀の刃先を自由自在に用いる練習は、目・鼻などの微妙な表現に大切です。
しかし小刀の刀全体をフルに用いて立体を大つかみに表現してゆく彫りの練習は更に大切です。左図は四角柱の先に宝珠(ネギ坊主)を造る行程の概略をイラスト化したものです。詳しくは宝珠のページ(工事中)を参照下さい。


つまり小刀を初め、各種彫刻刀を大胆かつ微妙に操りながら、立体的で優雅な味わいの深いみ仏を刻むのが仏像彫刻です。


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